2006年05月04日
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第21期会長 加藤泰建
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2005年5月22日、北海道大学で行われた2005年度総会において、「日本文化人類学会学会賞選考規則」が承認され、本学会では「日本文化人類学会賞」と「日本文化人類学会奨励賞」とからなる学会賞が制定されました。これを受けて、第21期理事会では、2005年度、学会賞選考委員会の推薦にもとづき、両賞の受賞者の選考を行ったところです。なお、学会賞選考委員会は、理事会の議を経て学会長が委嘱した委員(理事3名、理事以外の会員2名)によって構成されます。
制定された二つの賞のうち、日本文化人類学会賞は、「日本文化人類学会会員による研究活動の活性化のために、会員の中から過去5年間の研究活動において、もっとも優れた業績をあげた者を原則として1名選出し授与する」(「日本文化人類学会学会賞選考規則」より。ただし、2005年5月22日制定時の文言。以下同)ものです。受賞者の選考においては、学会賞選考委員会に対し、まず評議員会が投票によって複数の候補者を推薦します。次いで学会賞選考委員会は、それらの候補者の中から1名の候補者を選考して理事会に推薦します。理事会は、学会賞選考委員会からの推薦にもとづき、投票によって受賞者を決定します。
他方、日本文化人類学会奨励賞は、「日本文化人類学会の若手研究者による研究活動の活性化のために、過去2年間に、研究活動においてもっとも優れた業績をあげた若手研究者を原則として1名選出し」、授与するものです。原則として対象論文掲載時に満35歳以下の会員を受賞資格者とします(ただし、年齢制限については研究歴を考慮します)。受賞者の選考においては、過去2年間の学会誌『文化人類学』(『民族学研究』、英文誌Japanese Review of Cultural Anthropologyを含む)に掲載された論文の執筆者のうち、受賞資格者の中から、学会賞選考委員会がもっとも優れた者を原則として1名選考して理事会に推薦し、その推薦を受けた理事会の投票によって受賞者を決定します。
以上のような両賞の趣旨と選考手順にもとづき、厳正な選考を行った結果、2005年度は各賞の受賞者をそれぞれ次のように決定いたしました。
| 第1回日本文化人類学会賞受賞者 | 川田順造会員 |
| 第1回日本文化人類学会奨励賞受賞者 | 野元美佐会員 |
| | 森田敦郎会員(姓の50音順) |
つきましては、授賞理由と併せ、会員のみなさまに授賞をお知らせいたします。
第1回日本文化人類学会賞の授賞
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2006年3月16日
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日本文化人類学会は第1回日本文化人類学会賞を川田順造氏に授与することとした。
- (授賞の理由)
- 川田順造氏は、過去5年間において、10篇をこえる編著・単著を公刊しており、国内外で発表された論文も多数にのぼる。大家の域に達しながらもかわらぬ旺盛な研究活動は、会員の最近の研究活動の中で、とくに抜きん出たものがある。
アフリカ研究への貢献はもとよりのこと、言語と文化研究、歴史研究、親族研究、開発研究、さらには人類学的認識論にわたるまで、文化人類学における複数領域を交差させながら描いた数々の著作は、高い研究水準を維持しつつ、その幅広さや奥深さにおいて、会員のみならず一般読者をも魅了してやまない。
なかでも2004年に出版された『人類学的認識論のために』(岩波書店)は、川田氏の人類学者としての半世紀の研究を集大成したものであると同時に、現在の文化人類学が直面している状況に果敢に立ち向かう姿勢をうかがわせるものであり、わが学会の一つの到達点を示した稀有の労作といえよう。
日本文化人類学会は、優れた研究業績をあげた会員であり、本学会の活性化に寄与している会員として川田順造氏を選考し、ここに日本文化人類学会賞を授与する。
第1回日本文化人類学会奨励賞の授賞
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2006年03月16日
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日本文化人類学会は以下の2名に第1回日本文化人類学会奨励賞を授与することとした。
- (受賞者)
- 野元美佐
- (授賞対象論文)
- 「貨幣の意味を変える方法−カメルーン、バミレケのトンチン(頼母子講)に関する考察」
(『文化人類学』第69巻3号, pp.353-372, 2004年)
- (授賞理由)
- 野元氏は授賞対象論文において、カメルーンのバミレケ社会の貨幣を媒介にした頼母子講が、単なる近代的融資機関の代替物でも純粋な互酬的慣行でもなく、市場交換と贈与交換をつなぐ役割を果たしながら、嫉妬の対象ともなる貨幣を皆の資源としての貨幣へと意味を変換するものであると論じている。
従来の研究に対する論考の位置づけと問題設定、資料の提示分析、そして理論的な考察を、過不足ない形でバランスよく構成している点を高く評価する。
- (受賞者)
- 森田敦郎
- (授賞対象論文)
- 「産業の生態学に向けて−産業と労働への人類学的アプローチの試み」
(『民族学研究』第68巻2号, pp.165-188, 2003年)
- (授賞理由)
- 森田氏は授賞対象論文において、産業と労働に関する学説史を丹念にたどりながら、近代化に伴って産業労働から社会関係が排除されるという既存の前提を疑う立場から先行研究を批判・再評価し、それをもとに社会関係を重視する人類学の手法を生かした「産業の生態学」という新たな分野の開拓を構想している。
これまでの産業人類学と教育人類学からの取り組みを精査した上で、そこから新たな研究手法や理論的枠組みを導き出し、産業労働の人類学的研究の可能性を切り開いた点を高く評価する。
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