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- 2022年度第2回日本文化人類学会倫理委員会シンポジウム「日本におけるアイヌ民族研究への文化人類学的アプローチ」
日時: 2022年12月10日(土曜日) 13時30分~15時30分(最長30分延長有)
会場: オンラインのみ(Zoom)
プログラム:
- 1. 趣旨説明(司会)、伊藤敦規(国立民族学博物館、准教授) 私たちの問題として考えるために
- 2. 発表、山崎幸治(北海道大学アイヌ・先住民研究センター、准教授) 『民族学研究』にみるアイヌ民族綜合調査
- 3. 発表、北原モコットゥナシ(北海道大学アイヌ・先住民研究センター、准教授) 調査研究による生活への影響と今後に期待すること
- 4. コメント、佐々木史郎(国立アイヌ民族博物館、館長) 「よりそう側」という立場から振り返る
- 5. コメント、窪田幸子(芦屋大学、学長) 文化人類学の未来に向けて
- 6. 総合討論
時間配分:
- 趣旨説明10分x1名、発表20分x2名、コメント15分x2名、総合討論40分
※総合討論は延長する可能性あり(最長30分程度)
事前配布資料:
- 1)企画書WORD、(2)文献一覧WORD、(3)アイヌ研究年表PDF、(4)地図PPT
このリンクからダウンロードしてください
※シンポジウム当日は授業等で活用しやすいエクセル版アイヌ研究年表も配付します。
参加登録:
問合せ先
- 30thethicscommittee[at]gmail.com(@を[at]に置き換えています)
備考:
- 主催:日本文化人類学会倫理委員会
- 協力:齋藤玲子(国立民族学博物館)、河合洋尚(東京都立大学)、深山直子(東京都立大学)、大西秀之(同志社女子大学)、小谷真吾(千葉大学)
- 年表協力(「大学(文化・社会人類学等教室・講座・コース)」列の情報提供、回答順):
沼崎一郎(東北大学)、高倉浩樹(東北大学)、吉本裕子(横浜市立大学大学院)、
須永和博(獨協大学)、小林誠(東京経済大学)、菊地滋夫(明星大学)、
上杉富之(成城大学)、宮脇千絵(南山大学)、石井洋子(聖心女子大学)、
小林宏至(山口大学)、斉藤尚文(中京大学)、湖中真哉(静岡県立大学)、
山越英嗣(都留文科大学)、山本芳美(都留文科大学)、泉水英計(神奈川大学)、
小川さやか(立命館大学)、手塚薫(北海学園大学)、久保田亮(大分大学)、
山本真鳥(法政大学)、小池誠(桃山学院大学)、風間計博(京都大学)、
慶田勝彦(熊本大学)、奥野克己(京都文教大学)、シンジルト(熊本大学)、
西真如(広島大学)、中空萌(広島大学)、石森大知(法政大学)、
東賢太朗(名古屋大学)、河野正治(東京都立大学)、佐本英規(筑波大学)、
二文字屋脩(愛知淑徳大学)、池田昭光(明治学院大学)、片岡樹(京都大学)、
津村文彦(名城大学)、今堀恵美(東海大学)、白川千尋(大阪大学)、
宮原曉(大阪大学)、大澤由実(青山学院大学)、小河久志(亜細亜大学)、
岩佐光広(高知大学)、山口未花子(北海道大学)、小田博志(北海道大学)、
石田慎一郎(東京都立大学)、田沼幸子(東京都立大学)、綾部真雄(東京都立大学)、
立川陽仁(三重大学)、加賀谷真梨(新潟大学)、広瀬健一郎(鹿児島純心女子大学)、
東京大学大学院総合文化研究科・超域文化科学専攻・文化人類学コース、
三浦敦(埼玉大学)、曽我亨(弘前大学)、井上敏昭(城西国際大学)、
三尾裕子(慶應義塾大学)、佐川徹(慶應義塾大学)、大石徹(芦屋大学)、
飯嶋秀治(九州大学)、中川裕(千葉大学)、吉田睦(千葉大学)、
山本睦(山形大学)、木名瀬高嗣(東京理科大学)、奥島美夏(天理大学)、
伊藤泰信(北陸先端科学技術大学院大学(JAIST))、田所聖志(東洋大学)、
門田岳久(立教大学)、木村自(立教大学)、丸山淳子(津田塾大学)、
宮本万里(慶應義塾大学)、中谷文美(岡山大学)、松村圭一郎(岡山大学)、
高野さやか(中央大学)、清水芳見(中央大学)、伊地知紀子(大阪公立大学)、
山田亨(明治大学)、山内健司(明治大学)、神原ゆうこ(北九州市立大学)、
竹川大介(北九州市立大学)、山口裕子(北九州市立大学)、吉野晃(東京学芸大学)、
水谷裕佳(上智大学)、吉田世津子(四国学院大学)、土井冬樹(神戸大学)、
長沼さやか(静岡大学)、戸部健(静岡大学)、山本義彦(静岡大学)、
福井栄二郎(島根大学)、内藤順子(早稲田大学)、竹中宏子(早稲田大学)、
松前もゆる(早稲田大学)、余語琢磨(早稲田大学)、箕曲在弘(早稲田大学)、
桑山敬己(関西学院大学)、増田研(長崎大学)、小西公大(東京学芸大学)、
赤堀雅幸(上智大学)、横田祥子(滋賀県立大学)、島村恭則(関西学院大学)、
椎野若菜(東京外国語大学) [101名+1機関]
和人やアイヌ民族、アジア、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパ、大洋州に暮らすさまざまな人びとから構成される日本文化人類学会の現在の会員数は約1,760名です。その中でアイヌ民族研究を専門としている会員数は僅かですが、多くの会員がアイヌ民族の現状や歴史に関心を寄せていて、関連書籍を熱心に読んだり、学生を連れて北海道を訪問したり各地の博物館を訪れてアイヌ民族の文化に触れたり、一般教養科目等で教え・学んだりしています。では、来年6月に学会長がアイヌ民族の調査研究に関する声明を出す計画があることをご存じの会員はどれくらいいるでしょう。その声明の一つの根拠になるであろう、アイヌ民族と(文化)人類学会との150年にわたる関係の記憶は、学会員の世代交代が進む中でおぼろげになっていないでしょうか。
本シンポジウムでは、両者の関係史のなかで時系列上の真ん中に位置する「アイヌ民族綜合調査」をシンボリックな出来事として注目し、アイヌ民族を出自とする研究者と、アイヌ民族を研究仲間・同僚としてきた北海道在住の研究者を登壇者に迎えます。調査の目的、方法、記録を検討するのみならず、現在まで継続する調査の影響などについても、調査する側・調査される側の人びとの間での対話や合意形成プロセスといった観点から振り返ります。さらにそこに新たに「よりそう側の人びと」という視点も加えることで、今後の文化人類学的アイヌ・先住民研究のあり方を模索します。
2017年度以降、本学会は、4学協会(北海道アイヌ協会、日本人類学会、日本考古学協会、日本文化人類学会)の一員として「アイヌ民族に関する研究倫理指針(案)」の策定に取り組んできました。そこでの一連の議論は本学会とアイヌ民族との長年にわたる関係史のなかに位置付けて理解することが大切です。本シンポジウムはその点を改めて確認することで、アイヌ民族との真の対話や協働を再考する一つの機会としたいと思います。
- 「アイヌ民族綜合調査」とは…
日本文化人類学会(旧称、日本民族学会)の前身である財団法人日本民族学協会の理事長に1949年に就任した岡正雄が組織した大型プロジェクトです(当時の会長は澁沢敬三)。1951年から53年までに実施した調査には、東京大学理学部人類学教室、広島医科大学、奈良県立医科大学を中心とする自然人類学者が参加したのみならず、戦後日本の各地の大学の文化・社会人類学教室や研究機関の創設に携わった研究者が多数参加しました(石田英一郎、泉靖一、岡正雄、蒲生正男、久保寺逸彦、小山隆、杉浦健一、鈴木二郎、瀨川清子、祖父江孝男、高倉新一郎、知里真志保、八幡一郎など)(日本民族学会1964a)。調査の成果は1951年に開催された第6回日本人類学会・日本民族学会連合大会での口頭発表や(紀事刊行は1953年)、1952年に刊行された『民族学研究』16(3・4)、1953年に札幌で開催された第8回日本人類学会・日本民族学会連合大会での「アイヌ問題シンポジウム」(紀事刊行は1955年)などにまとめられています。杉浦の急逝の後、泉や岡による服部四郎への働きかけ(委嘱)で始まった1955年から56年の「アイヌ語諸方言の基礎語彙調査」には、服部の他、知里真志保、北村甫、福田(田村)すゞ子が参加し、その成果は1960年の『民族学研究』24(4)を経て1964年の『アイヌ語方言辞典』として結実しました。
「アイヌ民族綜合調査」については別紙文献一覧にまとめたように、調査に直接参加した者、その遺族、直接参加しなかった後進の研究者によって回顧、紹介、分析、言及されています。また、泉靖一が残したフィールドノートをはじめとする一次資料は、神奈川大学常民文化研究所と国立民族学博物館にアーカイブ資料として保管されており、現在でも研究が進められています(国立民族学博物館共同研究「沙流川調査を中心とする泉靖一資料の再検討」、代表者:大西秀之)。さらに、杉浦健一の遺族が保管していた1953年に北海道などで撮影した写真が、2022年になって国立民族学博物館の杉浦健一アーカイブに追加されました。
- (文責:伊藤敦規)
