執筆細則付則1—文中における引用表示の方法

『文化人類学』第28期編集委員会(2019年12月14日理事会承認)



1. 基本ルール
2. 複数の箇所を参照する場合、また、同一文献を集中的に引用する場合
3. 本文中の著者・著作への言及を利用する場合
4. 著作者表記をめぐるルール
5. 刊行年表記をめぐるルール
6. 参照の意図の付記
7. ページ指定以外の参照方法
8. 私信・新聞・ウェブサイトの情報
9. 基本ルールの形では参照困難な場合

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1. 基本ルール

 文献引用表示は、本文中および注の内部で行う。文中の適当な箇所に全角大カッコ[ ]を挿入し、下の例にある通り〈著者姓+半角アケ+刊行年+全角コロン(:)+ページ〉の形式で書く(アルファベット表記の文献の場合も区切りのコロンは全角を使用)。複数ページの場合は始まりと終わりを半角ダッシュ(–)でつなぐ。なお、3番目の例にある通り、開始ページと終了ページの間で数字の重複がある場合、後者の中の重複部分を省略して表記を短くすることができる。

【例】[馬淵 1935:9]
   [Gupta & Ferguson 1997:ii–iii]
   [田中・松田編 2006:18–9]

 同一文献から何度も引用する場合も、ibid.、上掲書などとせず、上記方式の表記を繰り返すこと。

 2名以上の著者による文献に何度も言及する場合、もし他の文献との混同の余地がなければ、2回目以降の引用表示においては、「ほか」(日本語文献の場合)、「et al」(英語文献の場合)等を用いて短くすることができる。

【例】[セリグマン,ウォーカー & ローゼンハン 2016](初めての引用)
   [セリグマンほか 2016](二度目以降)


2. 複数の箇所を参照する場合、また、同一文献を集中的に引用する場合

 下の最初の例にもある通り、同一文献中の複数の箇所を参照する場合は全角コンマ(,)でつなぐ。二番目の例にある通り、同一著者等の複数の文献は全角コンマ(,)のあと刊行年以下をつなげることができる。著者等が異なる複数の文献は全角セミコロン(;)のあとに続ける。

【例】[山口 1975:143–51,182–3]
   [山口 1975:123,2007:55;サーリンズ 1993:125]

 なお、同一文献から多数の引用がある場合など、本文中または注において、例えば「以下、カッコ内は同書のページを指す」といった断り書きをし、引用表示を簡略化することもできる。また複数の文献から多数の引用がある場合、記号を用いるなど一定のルールを設けたうえで引用表示を簡略化することも可能。この場合、混同が生じないよう十分に注意すること。


3. 本文中の著者・著作への言及を利用する場合

 文中で著者ないし著作に直接言及する場合、以下のように、その語句を用いた引用表示をすることでスペースを節約してもよい。ただしアルファベット表記の文献で、3番目の例のように、文中で著者名をカタカナで言及している場合は、この方法は使えない。

【例】この点に関しては、山口[1975:123]が論じている通り〔……〕。
   サーリンズの著作[1993]によれば〔……〕。
   ジェルは〔……〕と論じる[Gell 1998:84]。

 付言すれば、『文化人類学』では本文中で外国人著者をカタカナで言及することが慣例化している。これは研究者名と被調査者の人名(カタカナで表記されることが多い)との間に落差を設けない、人類学らしい姿勢の反映であるとも解釈できる。これを慣例として認めたうえで、しかし、『文化人類学』の掲載論文は多様な性格のものでありうるので、著者の選択によって本文中で外国人著者を一貫してローマ字で言及することも可とする。


4. 著作者表記をめぐるルール

 文献によっては著作者が不明ないし不明瞭な場合がある。その場合、著作者名に類する名称(発行者名、制作団体名、アーカイブ名等)が存在する場合には、その名称を用いること。

 なお、文献によっては[馬淵 1935:9]型の表記をせず(したがって「参照文献」に含めず)、文中または注の中で引用表示することも可能である。

 以上は「参照文献」における表記と重なる問題であるので、付則2の該当部分(1.⑥)、また同じ付則2の4.のフローチャートを参照のこと。


5. 刊行年表記をめぐるルール

 初版刊行年や翻訳書の原書刊行年を書き添えたい場合は、半角アケして半角カッコに入れる。この場合、論文末の「参照文献」でも同様の表記が必要(なお、論文末で原書刊行年を付記し、引用表示の方はそれを省略することも可能)。

【例】[Malinowski 2014 (1922):18]
   [サーリンズ 1993 (1985):199–200]
   [Godelier 2011 (2004):200–1]

なお、以下のような様々なケースでは、刊行年の場所に該当する文字を入れる。

刊行年不明の場合 日本語表記では「日付不詳」、例えば英語では「n.d.」。

近刊や印刷中の場合 刊行予定日が決まっている場合は、刊行予定年を用い、書誌情報の末尾に、日本語表記では「近刊.」ないし「印刷中.」、例えば英語では「Forthcoming.」または「In press.」と追記する。刊行予定日が決まっていない場合は、日本語表記では「近刊」ないし「印刷中」、例えば英語では「Forthcoming」ないし「In press」を刊行年の代わりとして用いる(本文中でもそれらの文字を著者姓のあとに続ける形で引用する)。


6. 参照の意図の付記

 引用表示の全角大カッコの中には、「〜を参照」、「〜も参照」、「ただし〜も参照」等、参照の意図を含む語句を入れることもできる。ラテン語の e.g. (=exempli gratia, 「例えば」)や cf.(=confer, 「比較せよ」)なども使用可(cf.は内容的差異にも注意しながら参照してほしい場合に使う)。

【例】[山口 1975:123–4,なお143–51も参照]
   [e.g. Gupta & Ferguson 1997:ii]
   [山口 2007:55;cf. サーリンズ 1993:125]


7. ページ指定以外の参照方法

 コロン以降では、ページ指定以外の方法で位置を示すこともできる。そこで用いる語句は、当該文献の章構成等を参考に、著者が適切なものを選ぶこと。

【例】[サーリンズ 1993:第2章]

 「参照文献」には、ウェブサイト、映像、写真など様々な媒体のものが含まれうる。書物以外の媒体の場合、資料の性質に合わせて適切な表記法を考え、言及したい箇所を示すこともできる。下記は付則2の1.⑥に例示されているオンライン映像で、参照部分を細かく指定したい場合の例。

【例】[Macfarlane 2010:14'–15']


8. 私信・新聞・ウェブサイトの情報

 私信についてはカッコを添えてその内に説明するか、注をつけて説明する。この情報を論文末の「参照文献」に再掲載することは不要。

【例】 山田一郎によれば(著者への電子メール、2014年10月3日)、……

 新聞やウェブサイトの情報(文書、映像など)については、オンラインの論文をはじめ、著作者名がある文書や著作者名に類する名称がある文書は一般に「参照文献」として取り上げることになる(付則2の1. ⑥を参照)。ただし、周知性の高い新聞やウェブサイトの場合は、次の例のように、本文中にカッコに入れて略式の表示をしたり、注に入れたりすることも可とする。

 【例】『毎日新聞』によれば……である(「来訪神が無形文化遺産へ――民俗行事への関心広がる」2018年11月4日首都圏版朝刊社会面)。

    日本文化人類学会はその学会誌について……と述べている(「『文化人類学』とは」http://www.jasca.org/ 2019年8月1日閲覧)。


9. 基本ルールの形では参照困難な場合

 引用文献を上記の基本ルールの範囲内で引用することが難しい場合は、注をつけてそこに参照方法を記入することもできる。この形式で参照した文献は、重要文献である場合を除き、論文末の「参照文献」に再掲載する必要はない。