会費体系の改定について

更新:2015年04月05日


第26期会長 関根 康正

 会員数約1,850名を擁する日本文化人類学会は、世界第2の規模の文化人類学会として、会員のみならず国内外からのさまざまな要請に応え、積極的な活動を展開してきました。しかし、年毎に学会の活動が拡大する一方で、会員数については2009年度の約2,050名を頂点に減少が続き、とくに経済的な理由から退会せざるをえない会員がふえています。これについて第24期(2010〜2011年度)以降の理事会は対策を検討してきました。

 第26期の理事会はこれまでの議論を受けて、会員構成、会費納入状況、学会収支などについて分析を重ね、定年等により勤務先を退職したが研究を継続している会員と、大学院を修了・満期退学した後、常勤職を得るにいたっていない会員について、特段の配慮を行うことが適切であると判断いたしました。従来、国内在住通常会員のうち、大学の学部生、大学院生および研究生については学生割引が適用されてきましたが、同様の割引措置を一定以下の年収の会員に広く適用することで、学会での研究発表等に意志と意欲を有する会員が活動を継続しやすくなると理事会は考えます。2015年度時点で割引の適用を受ける会員数は約300名であり、仮に年収300万円以下の会員の会費を割り引くこととした場合、対象となる会員数は600名程度と見込まれます。割引の適用は会員の申請と理事会の承認によるものとし、申請に際しては予定年収を自己申告していただく予定です。

 言うまでもなく、会費割引対象会員の拡大を行うと同時に、学会の収支を健全に保つ措置がとられなくてはなりません。この点について精査したところ、現状での学会収支は相当に危機的な状況にあることが明らかになり、これについての対応も急務であると第26期理事会は判断します。

 下記に見るとおり、2015年度の予算案では前年度繰越金約700万円(6,937,977円)に対し、予備費(次年度繰越金に相当)は約250万円(2,438,997円)となっており、予算自体が約450万円の赤字となっていることがわかります。将来計画基金については、学会創立50周年事業によって大幅に減少した分(700万円)を立て直すため、本会計から150万円を繰り入れる予定であって、収支差額はその分黒字となる予定ですが、本会計・将来計画基金を合わせた総資産は約300万円の赤字となると見込まれます。実際に、2016年1月末時点での実際の収支状況をみる限りにおいても2015年度の決算が赤字となることは避けられません。

2015年度予算案より抜粋
費目 金額
本会計
前年度繰越金 6,937,977
収支総額 28,074,297
予備費 2,438,997
将来計画基金
前年度繰越金 4,484,588
収支総額 5,985,088
次年度繰越金 5,984,656

 実際には学会収支が赤字となる傾向は2015年度に限られたことではありません。本会計について過去10年間に関して単純に収支差額を比較しても5年が赤字であり、補助金、将来計画基金からの繰入金、寄付金等を収入から除き、補助金に基づく事業、将来計画基金への繰入金等を除いた経常収支ベースでは7年が赤字であることが判明しています。ま た、将来計画基金については、学会の安定的な運営のために、経常支出単年度分程度の金額(1800万円)があることが望ましいところ、2015年度末の時点で1200万円程度が不足すると予測されます。総じて、学会資産および収支の状況は劣悪であり、遠からず(予測では2018年度)将来計画基金から毎年度本会計への繰入を行わざるを得なくなり、数年を経て(予測では2021年度)将来計画基金を使い果たしてしまうことが危惧されます。


 学会の資産と収支の状況を健全化するためには、まず会費の納入率を上げることが重要であり、第27期以降にはより確実な会費納入手段を工夫しなくてはなりません。また、拡大を続けてきた学会事業の再評価により事業規模の適正化を行うことも必要ですが、学会に求められる学術的、社会的役割がますます大きくなっていることを考慮すれば、大幅に事業を縮小することは困難です。

 したがって、会費割引制度の拡大と学会の資産および収支の状況の健全化とをともに実現するためには、会費納入率の改善と事業の見直しに加え、通常会員の会費値上げを含む会費体系の改定を行うことが不可欠です。

 本学会の会費は1983年度以来32年間にわたり現在の金額のままに留め置かれており、この期間に消費者物価は1.22倍、国立大学の授業料は2.40倍となっています。1990年代後半に学会会計の赤字が問題になり、2000年度の総会で検討に付されながら実施が見送られたことも考え合わせると、会費体系の見直しはすでに一刻の遅滞も許されない状況にあると言わなくてはなりません。

 試算では、通常会員会費を8,000円から11,000円に改め、学生割引会費に替わる減額対象会員会費を5,000円から6,000円に改めることで、学生の負担増を最小限とし、割引を受けられる会員の数を2倍にし、学会収支を単年度100万円程度の黒字とすることが可能となります。会費の改訂を頻繁に行うことは避けなくてはなりませんので、単年度100万円程度の黒字は、学会資産を立て直すとともに、物価の上昇や事業の拡大があった場合にも一定期間にわたり会費を固定するのに必要最小限の金額として算定しています。

 第26期理事会は次期理事会に向けて、2017年度に割引制度の拡大と通常会員会費の値上げを含む会費体系の改定を実施すべく、2016年度の総会でこれを審議する案を申し送る予定です。会員の皆様にも上記についてよくご検討いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。本件についてご質問、ご意見のある方は、学会事務局宛メール、封書等にてお寄せいただけますと幸いです。
以上