日本民族学会会員各位

「改称問題」に関わるお知らせとお願い

2002年7月9日
日本民族学会会長
大塚和夫

 梅雨の候、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 さて、本学会の名称(日本民族学会)の変更に関する案件(以下、「改称問題」)は、それまでも非公式の場で話題となることもありましたが、初めて具体的に提起されたのは、第16期の青木保会長の時代でした。結果的には千葉大学で開催された第49回日本人類学会・民族学会連合大会における臨時総会で、改称をも含めた学会会則や機構の見直しを行うという結論に至り、それを論議するための特別委員会が設置されました。その後、第17期の山下晋司会長の時代に改称を事実上保留し、学会会則などの改正を行いました。

 この問題が再度浮上してきたのは、昨年秋以降のことです。第19期理事会の審議を経た上で、波平恵美子会長が会員の皆様に直接お手紙を送りました(2001年11月20日付、『民族學研究』第66巻第4号、529-530頁参照)。そこで問題とされたのは、これまでの改称問題とは異なる事情、すなわち、日本学術会議の役割が縮小される可能性、科学研究費の申請枠組の変更、トップ30(現在では「21世紀COEプログラム」と呼ばれる)の新設などといった学会を取り巻く状況の変化に対応する必要性です。このことを踏まえ、学会名称を「日本民族学会」から「日本文化人類学会」へ変更することの是非を問いたいという趣旨が記され、手紙、ファックス、電子メールなどを通して会員の皆様のご意見を伺いたい、という呼びかけがなされました。

 その呼びかけに応える形で、30通ほどのご意見が寄せられました。その内容およびそれらに対する波平会長のコメントは、『民族學研究』第66巻第4号、527-529頁に掲載されておりますので、ご参照ください。寄せられたご意見の大半が改称に前向きであったことを受けて第19期理事会は「改称問題」を今期(第20期)理事会への引継ぎ事項のひとつとすることを決定し、臨時に評議員会を召集して、そこでの承認を経た上で今期へと申し送りました。

 以上の経緯を踏まえ、今期理事会は「改称問題」を引き継ぐか否か、さらに引き継いだ場合にはどのように対処するかについて、短期間とはいえかなり慎重な議論を積み重ねました。その結果、「『日本民族学会』改称問題の扱い(案)」を作成し、本年6月1日金沢大学で開催された評議員会において承認していただきました。そしてそれをもとに、2日に開催された総会の席に同様の文書を提出し、出席者127名の中から議長・副議長を除いた125名に挙手で賛否を問い、賛成123名、反対0名、棄権2名という結果で承認を受けました。承認された議案の詳細に関しましては、本状に同封の総会用資料の写し(一部改変)をご覧ください。

 同資料にも記してありますように、今回の提案の趣旨は、?民族学、文化人類学、社会人類学などの研究に携わる者の唯一の包括的全国組織という本学会の特長を維持することを最優先事項とする、そして学会名称を変えるにしても?学問内容というより、学会組織の形式に関する変更であり、学会の性格や会員の学問のあり方に変更を求めるものではない、といったところに帰着します。同時に、?問題の性質上、可能な限り慎重な審議・検討を経た上で決定に至らなければならない、といった点も強調しております。

 総会の承認を受けた上で、理事会としては資料の「3.改称に向けた手続き」の枠に囲まれた欄中の「a)」の手続きに関する処理を早急に実施しなければなりません。本状は、皆様へ投票を呼びかけ、「改称問題」に関する積極的な取り組みをお願いするものです。全会員の郵送による投票、さらに有効投票数の3分の2による承認は異例の手続きですが、これも「改称問題」がそれだけ慎重に扱うべききわめて重要な案件であるという認識を示しているものとお考えください。投票の具体的な要領、ならびに学会ホームページなどを通した会員の方々からの意見の聴取とその公開方法に関しては、別紙をご覧ください。

 日本のみならず世界的にみても、民族学、文化人類学、社会人類学などの学問領域は大きな転機に直面しております。そのうえ、日本の高等学術体制が激しく変わりつつある今日、われわれの学問領域における現状の改善のみならず、今後のいっそうの発展を見据えた長期的視野からも、この問題に対して皆様が忌憚なくご意見を述べられ、熟慮された後に冷静な判断を下されることを切にお願い申し上げる次第です。

 何かとご多忙の折と存じますが、何卒よろしく投票にご協力ください。

以上