会長就任挨拶
更新:2002年12月4日



第20期会長 大塚 和夫

会長就任に際して

 波平恵美子会長の後を受けて、第20期の日本民族学会会長に就任いたしました。微力ですが、できうる限りこの重責を果たしていきたいと思っております。なにとぞ宜しくお願いいたします。
 この数年来、日本の高等学術体制は大きな変動の波に洗われております。国公立大学や大学共同利用機関の独立行政法人化、自己評価に加えて外部評価や第3者評価を大学に積極的に導入しようという動き、文部省ならびに日本学術振興会からの科学研究費補助金の枠組の見直し、21世紀COEというあらたな研究費支給枠の創設、そしてこれまでの学界体制を支えてきた学術会議自体の再編成の気運、これらの動きがただちに目につきます。昨今、日本の政治・経済システムに対する「構造改革」が盛んに叫ばれていますが、それが学術の分野にも波及しているということになるのでしょうか。
 さらに問題は高等学術体制のみにとどまりません。初等・中等教育、さらに博物館なども含む社会教育における民族学・文化人類学的知識の普及を訴える必要性はいっそう高まっております。また、適切な国際協力や開発援助に対して、われわれの学問が貢献する方途を探る議論も深める必要があるでしょう。すなわち、狭義の学術活動のみならず、社会・文化活動のさまざまな分野に対して、民族学や文化人類学の立場から発言を求められる機会が今後ますます増えてくるものと考えられます。学会はそのような社会的期待に充分に応えることができるような体制を整えなければなりません。
 前期理事会から引き継いだ学会の「改称問題」も、このような脈絡の中で慎重に検討をするべき課題と思われます。第20期理事会としては、「改称問題」に関しては、基本的に全会員の意向に基づいて決着をつけるべきであると考えます。理事会の役割は、問題点の整理を行ない、会員の方々の意向ができるだけ反映される具体的手続きを提案し、その結果に基づいてこの問題に対する試案を提示することです。結果がどうであろうと、原則はあくまで、70年近くにわたって日本民族学会が培ってきた、優れた学術的成果を今後も継承することであり、今回の議論も本学会が将来いっそうの発展するための基盤作りのひとつであると考えます。
 変動の時代の荒波を乗り越える舵の切り加減には、かなりの巧みさと慎重さが要求されます。理事会の手に余る難問も出てくるかもしれません。皆様からの忌憚のないご意見やご助言をいただき、この荒波を何とか乗り切っていこうと思っております。重ねて会員の皆様のご協力をお願いする次第です。