人類学会世界協議会(WCAA)への加盟について

日本文化人類学会国際連携委員長(第21期) 小泉 潤二

 2004年10月24日、日本文化人類学会理事会は評議員会の審議結果を受けて、人類学会世界協議会―World Council of Anthropological Associations、通称WCAA―に加盟することを正式決定しました。日本文化人類学会のWCAA加盟は、2005年5月21日・22日に北海道大学で開催される第39回研究大会の総会で報告される予定です。

 人類学会世界協議会(WCAA)は、文字通り全世界の人類学会の連携と協力のための組織です。2004年6月9日〜13日にブラジルのレシフェ市で開かれた国際会議(世界の人類学――国際組織の強化と人類学という職業の有効性 World Anthropologies: Strengthening the International Organization and Effectiveness of the Profession)で創立が決定されました。この国際会議は、ブラジル人類学会会長のグスタボ・リンス・ヒベイロ(Gustavo Lins Ribeiro)の提唱により、ウェンナーグレン人類学研究財団(ニューヨーク)の資金援助によって開催されたものです。世界各国から14の人類学会の会長らが代表として集まり、日本文化人類学会からは小泉潤二国際連携委員長が出席しました。人類学の国際連携と人類学の多様化について討議された結果、人類学会世界協議会の設立規約が作成され署名されました。設立に参加した以下の14の学会は、2005年4月までにすべてWCAAへの正式加盟を決定しました(アルファベット順、括弧内は出席した代表者の国名)。

American Anthropological Association - AAA (United States) 米国人類学会
Association for Anthropology in Southern Africa (South Africa) 南部アフリカ人類学会
Association of Brazilian Anthropologists -ABA (Brazil) ブラジル人類学会
Association of Social Anthropology -ASA (United Kingdom) イギリス社会人類学会
Australian Anthropological Society (Australia) オーストラリア人類学会
Canadian Anthropology Society (Canada) カナダ人類学会
European Association of Social Anthropologists -EASA (Portugal) ヨーロッパ社会人類学会
French Association of Anthropologists (France) フランス人類学会
Japanese Society of Cultural Anthropology (Japan) 日本文化人類学会
Indian Anthropological Society (India) インド人類学会
International Union of Anthropological and Ethnological Sciences-IUAES (Mexico) 国際人類民族科学連合(ユニオン)
Latin-American Association of Anthropology (Chile) ラテンアメリカ人類学会
Pan-African Anthropology Association (South Africa) パンアフリカ人類学会
Russian Association of Anthropologists and Ethnologists (Russia) ロシア人類民族学会
 レシフェの国際会議で決定されたWCAAの設立規約は以下のように定めています。

  1. 「人類学会世界協議会」(World Council of Anthropological Associations - WCAA)の設立に全員が合意する。
  2. 各学会は、それぞれの定める手続きに則って、一年以内に人類学会世界協議会WCAAに正式に加盟する。
  3. WCAAの目的は、人類学研究を国際的に発展させ、世界の人類学者の間で協働関係を進め情報を共有し、科学的議論や研究協力によって人類学的知識を広めることである。
  4. WCAAに加盟する各学会は、WCAAへの学会代表(International Delegate)を1名指名する。各国の代表の中の1名が、幹事(WCAA Facilitator)となる。幹事は一年交替とする。
  5. 適当と認められる場合、WCAAに加盟する学会のメンバーは、他の加盟学会の研究大会への参加登録料を免除される。参加登録料の割引がある場合は、その割引が適用される。
  6. 加盟学会の会長が、他の加盟学会の研究大会に参加することを歓迎する。
  7. 加盟学会は、他の加盟学会の活動について、自分の学会の研究大会で周知する。
  8. WCAAのホームページを作る。上記の幹事(WCAA Facilitator)が、WCAAのホームページを作成し維持管理する。
  9. 加盟学会は、自らのホームページにWCAA加盟学会であることを明瞭に表示し、WCAAにリンクするとともに、可能な場合には他の加盟学会にもリンクする。
  10. 加盟学会は、国際会議やシンポジウムやサマースクールなどを通じて、人類学とその隣接分野に関わる議論を活発化する。
  11. WCAAは、加盟学会に共通に関わる問題について、共同声明を発表することができる。
  12. 加盟学会は、学生や研究者にとって有用な研究情報の交換を支援する。
  13. すべての人類学会は、WCAAに加盟申請を提出することができる。加盟学会の会長の3分の2の賛成票により、新規の加盟が認められる。
  14. 加盟学会が学会代表を送らなかった場合、その年末に加盟学会とは認められなくなる。
  15. この規約は、加盟学会の会長の3分の2の賛成票により変更することができる。
  16. WCAAは、加盟学会あるいはそのメンバー個人の行動については責任を持たない。
 このほか、以下の点が合意されました。
  1. 今回の会議に参加した学会だけが創立メンバーとなる。
  2. この協議会の財政については、各学会からの拠出金によること、他の助成によることなどが考えられるが、今後検討する。
 人類学会世界協議会の設立について、詳細は『文化人類学』(69巻4号pp.607-12)掲載の「人類学会世界協議会(WCAA)の設立―人類学・民族学の国際連携に向けて」(小泉潤二)をご覧ください。WCAAを通じて、世界の人類学会の連携と協力が大きく発展することが期待されます。